1.種類
日本で「カラス」と呼ばれるのは、おもにハシブトガラスとハシボソガラスです。この2種類のカラスは、頭の形、声の違いで区別されます。ハシブトガラスとハシボソガラスは、住んでるところ、食べ物など、習性が微妙に異なります。それだけに、人との関わり方も異なります。
カラスの分類
網 | 目 | 科 | 属 | 種 |
鳥類 | スズメ目 | カラス科 | カラス属 | ハシボソガラス |
ハシブトガラス | ||||
ミヤマガラス | ||||
ワタリガラス | ||||
コクマルガラス | ||||
カケス属 | カケス | |||
ルリカケス | ||||
オナガ属 | オナガ | |||
カササギ族 | カササギ | |||
ホシガラス族 | ホシガラス |
ハシブトガラスとハシボソガラスの主な違い
ハシブトガラス | ハシボソガラス | ||
形態 | 全長 | 約56cm | 約50cm |
体重 | 550~750g | 320~690g | |
外見 | 嘴が太く彎曲している | 嘴が細めで真直ぐ | |
泣き声 | 基本 | カア、カアと澄んでいる | ガア、ガアと濁っている |
行動 | 移動方法 | 跳ねることが多い | 2足で歩くことが多い |
夜の休憩 | 集団ねぐらに集まる (2種が混在する事も多い) | 集団ねぐらに集まる (2種が混在する事も多い) | |
いる場所 | 樹上にいることが多い | よく地上におりる | |
分布域 | アジアの東南部~極東部 | ユーラシア大陸北部 | |
生息域 | 茂った樹林地の林緑 | 明るい疎林あるいは草原・農耕地・川原 | |
繁殖生態 | なわばり 営巣木 | つがいで営巣のため茂った常緑樹が多い | 基本的につがいで営巣のため見通しの良い高木が多い |
卵数 | 3~5卵 | 3~5卵 | |
抱卵時期 | 19~20日 | およそ20日 | |
育雛期間 | 30~50日 | 30~50日 | |
営巣開始気性 | 木の葉が茂ってから営巣期間を通して神経質になる | 木の葉が芽吹く前雛が巣立つ時は神経質になる | |
食べ物 | 特徴 | 雑食 | 雑食 |
好みもの | 樹木の種子 肉類 | 農作物 コガネムシなど昆虫 |
2.ハシブトガラスの生態
都会で増えているのは、おもにハシブトガラスです。本来は森林性のカラスで、都会にある森林に似た構造をうまく利用しています。繁殖は、それぞれのツガイが縄張りを持っていて、樹木の中などに巣を作ります。繁殖期以外の時期や繁殖に関わらない個体などは、夜には群れを作って緑地のねぐらに集まります。また、繁殖年齢に至らない若いカラスや縄張りを持てない個体は、群れを作って行動をします。
3.カラスのイメージ
カラスには、縁起の悪いイメージと神の使いといった良いイメージの両方があります。それだけ、古くから人との付き合いが深く身近な鳥でした。また、カラスがうるさいといった感情は江戸時代にもあり、人が町に住み活動をすると同時にカラスとの軋轢を生じていました。
4.都会で増えた原因
都会でハシブトガラスが増えた大きな原因は、食べ物となる生ごみが豊富にあることによると考えられます。また、森林のなかで木にとまって地上にある食べ物を得ることと、電柱にとまってごみ集積場所に出された生ごみを食べるということはわずかな行動の変化で順応できる程度の違いだったと考えられています。栄養価の高い生ごみを食べ物にすることにより、繁殖が高まり、雛をたくさん巣立たせることができました。人のそばにある生ごみを得ることにより、人を怖がらなくなり、巣作りもより人の近くでするようになりました。
5.人への攻撃
カラス、とくにハシブトガラスが人を攻撃する例があります。これは、おもに繁殖期の時に雛を守ろうとする行動です。攻撃は、単独やツガイによるもので、群れで襲うことはありません。カラスが人を攻撃するのは、巣より高いところから人が見下ろす場合などが多く、人が気づかずにカラスの攻撃を誘発している場合が多いようです。また、カラスは攻撃する前に、警戒、威嚇の行動をとります。その時に、気が付けば攻撃を回避することができます。